こんにちは。お久しぶりです。
この間取り図は雑誌(エイ出版)の企画でデザインしたマンションのリノベーションです。50代ぐらいの夫婦のための住まいを想定して自由に考えてください、とのことでした。実際に工事するわけではなく、仮定の計画です。ちなみにリノベーション前の間取りがこれです。
住まい手から要望を聞くことができない分、本当はどんな風に住みたいか、自分の中でいろいろ考えることになりました。
話は変わりますが、我が家の洗濯機をそろそろ買い換えようかという話になり、家電量販店に行ってきました。でも、正直なところ買いたいと思う商品はありませんでした。そのときに改めて感じたのは、暮らしにまつわるモノゴトは、「コレはコーユーモノでしょ」という先入観と思い込みにどっぷりと浸かっているのだなということでした。
どんなものでも長い歴史の中で先人達が失敗と成功を繰り返して培ってきた知識と経験と裏付けがあって、今のカタチになっています。だから、今のカタチが正解、という考え方もあります。
でも、デザインというものは常に時代と共にあります。環境、技術、感覚などは日々変化しているので、過去の経験則がそのまま活きるとは限りません。「変化」は必要なものだと思います。
「変化」のきっかけが「不満」であることが多いような気がしています。根本のスタイルは見直さずに不満の部分のみを解決するための守備的なデザインの変化です。 洗濯機も住宅も量産されるものには、同じような守備的なデザインの雰囲気があります。率直に言ってまったく魅力的ではないモノになっています。
洗濯機のようなデザインにならないように僕が気をつけていることがあります。
ひとつは、できるだけ白紙の状態から考え始めることです。こうすることで、先入観を排除し新しいスタイルを発見できる可能性が高まります。
もうひとつは、「こうしたい」という「欲求や希望」をデザインのきっかけにすることです。それによってデザインの多様性が生まれると考えています。また、「こうしたい」という欲求には人間の習慣を変える力があるのではないかと思います。以前のやり方より「気持ちがいい」からです。
話は冒頭の間取りの話に戻ります。
玄関のドアの内側に透明なドアをつけて、在宅時には共用廊下から中が見えるようにしました。見えるのは小さなお店やギャラリーのような場所です。マンションの廊下に、ギャラリーが並んでいたら楽しいですよね。
シャワーと入浴を別の行動に分けてそれぞれの体験が向上するように考えています。
こんな間取りの住まいは多分売ってないと思います。ギャラリーなんて必要ないし、シャワーとバスタブが別々なんて使いにくいと思われるかもしれません。 でも、「こうしたい」と考える人にとっては最高の住まいのはずです。それに「自分でつくる」という方法以外には手に入らない暮らしだと思います。それがリノベーションの持つ可能性です。
僕はこんなマンションが売っていたら欲しいなぁと思います。
どなたかいかがですか?